ベースボールトレーニング blog | 岡山のパーソナルトレーナー 岡田 康志

野球で最高のパフォーマンスを発揮するためのからだの使い方、パワーや力を高めるためのトレーニングの考え方をご紹介

理想的なスローイングとは

理想的というのは一番楽にからだが使える、そして一番楽にボールにスピードと力が伝えられることです。
からだの大きさや形は一人一人違いますが、使い方には共通のものがあります。
下半身→骨盤→体幹→肩→肘→手首→手の指というように動く順序は決まっています。
自然な動きが出来なかったり、動かす手順を間違えてしまうと無理が起こり、うまくできません。

慣性の法則を利用する
投げる動作では慣性の法則が使われます。
脚を上げる局面では位置エネルギーを蓄えます。
軸脚にからだの全てのエネルギーを集めるため、重心を高くすると位置エネルギーが大きくなります。
次にそのエネルギーを前方へ移動させ、運動エネルギーに変換します。
この時に慣性の法則を使うことになります。
重心を前方へ移動することで速度が生まれ、自然にエネルギーは前方へ伝わっていきます。
そこにプレートを押す力を加えれば加速度が生じます。
「立つ→前方へ移動する」それだけのことです。
これで投球スピードの大半が決まると言われています。

・姿勢反射を利用する
姿勢反射は自分の潜在能力を引き出すために必要不可欠なものです。
姿勢反射には、顔が向いた方向の腕は伸ばしやすく反対の腕は曲げやすいということがあります。
投げる方向を向いていれば投球する方の腕の肘は自然に曲がります。
投球方向にグラブを向けたり、肘や肩を出しても構いません。
それだけで肘は肩の高さにきます。

他には頸反射も大切です。
投げる時はずっとミットを見ておかないとコントロールが乱れるように思われますが、ずっと見ているとリリースで大きな力を発揮することができません。
実際には体重移動してリリースの時に方向は決まるのでずっと見ておく必要はありません。
リリースの時に前を向いているデメリットは腕を対角方向に巻きこめなくなります。
顎を感覚的に引くくらいで力が入り、リリースした後、フォロースルーで腕が対角方向に巻きこまれます。
上目遣いで投球方向を向くくらいで十分です。

・キネマティックチェインを使う
キネマティックチェインというのは投げるときのリリースポイントで全身の筋肉が一瞬にして同時に力を出せるようにするということです。
全身の筋肉は頭から足先まで繋がっています、
投げる時は手や腕だけでなくからだの全ての筋肉を同時に収縮させることで一番大きな力を出すことができます。
投げる瞬間に最大の力が必要で、それ以外の時には力はいりません。
力を抜いて投げるというのは力を抜いておくと一番大事なタイミング、ポイントで力を入れることができるからです。
最初から力を入れておくと力を出せる範囲が短くなり、力を抜いていると力を出せる範囲が長くなります。
力を抜いた状態から最適なタイミングで力が入ると最大のエネルギーを集積して伝えることができます。

このキネマティックチェインを意識する最大のポイントは体幹です。
ボールをリリースする瞬間は肩や腕に力を入れるのではなく「お腹」に力を入れます。
一番力が出るのは前に力を加える時に反対側の腰を少し戻すように使うことです。
作用・反作用の原理を使って腰を引きます。
これには体幹の力が必要です。
腹筋の力はもちろんですが、それを生かすために背筋力も必要になります。

こういうからだの使い方をすればたくさん数を投げても肩や肘の張りも少なく抑えることができます。
持久力が必要なのは肩や肘だけでなく、体幹もです。
体幹の力が弱いと腕に頼って投げるので肩や肘にストレスを受け、故障のリスクが高くなります。

・速度加重の原則を使う
ボールを投げる時の一番大きなエネルギーは下半身の動きから生まれます。
次に体幹の捻じれを使い、その次に肩、肘、手首、手の指という順番に関節を動かしていきます。
速度加重とは、一つ一つの関節の動きが終わるごとにスピードが加速されることを言います。
各関節の動きを連動させながら順序よく使っていけばスムーズな動きに見えます。
しかし、うまく連動できていないとギクシャクした動きに見えます。
ブレーキがかかった動きはボールのスピードにも影響します。

スピードが出ない投手のほとんどはこの連動が適切な順序で行われていないと考えられます。

スローイングのメカニズム④(プロと高校生、小学生の投球フォームの違い)

プロの投手の投球フォームを見ると、
・脚を上げた時のからだがブレない
体重移動では腰が比較的高く、重心が平行移動している
・トップからリリースの局面では体幹の捻りが使われている
・フォロースルーでは腕がからだに巻きつくようなイメージになっている

一方、高校生に多いのが、
・脚を上げた時にからだのブレが大きい
体重移動では腰が低く下がっていき、重心を下げている
・トップからリリースの局面では上体を前方へ曲げ、腕に力を入れて振っている
・フォロースルーでは腕が前方へ投げ出されている

スローイングのメカニズム③(リリースポイント)

リリースポイントが安定するとコントロールが良くなるということは指導する側もわかっていながら、そのリリースポイントのイメージを間違って理解していることも多い。
最適なリリースポイントではボールが一番前にあり、次に手首、肘、肩の順に並びます。
これが理想的なリリースポイントです。
リリースポイントは最もボールに力を伝えやすい位置です。

間違ったイメージで多いのが、「胸を張って肘を高く上げ、肘を前に出す」です。
肘を前に出すイメージで投げると、肘→手首→ボールの順にリリースされてしまいます。
そうするとボールを下から上に押す形になり、高めにボールが抜けるようになります。
高めにボールがいく投手はこの意識が強い傾向があります。

オーバースローの場合、一番前でリリースすると手のひらは斜め下を向きます。
そして腕は対角方向にクロスするので右打者のアウトコース低めにボールは行きます。
これがオーバースローの基本的なからだの使い方、自然なからだの使い方です。

肘を前に出すと肘が一番前にあるのでボールに力が伝わりません。
肘よりも手首、手首よりもボールが前にある時に、ボールに最大のスピードと力を伝えることができます。

肘を先導して投げると肘が伸ばされて大きなストレスがかかりますが、リリースポイントでボールが一番前にある状態では肘にはきません。
あとはフォロースルーを対角方向に持って来るだけです。
フォロースルーが対角方向に来ないのは腕を前に出しているからです。
腕を前に投げ出すと腕は減速されずに引き伸ばされます。
そうすると肩の後ろの腱板が伸ばされたり、肘が伸びすぎて関節で骨がぶつかり合うストレスが生まれます。
こういったストレスが肩や肘を痛める大きな原因です。
それを避けるにはからだの前で腕が対角方向にクロスするフォロースルーを取ることです。
これは自然なことなので難しい動きではありません。
できないということは動きが不自然であるということです。
楽にからだが動くフィーリングを身につけることは大切です。

スローイングのメカニズム② テイクバック

投げる動作では腕をトップに持っていく時も大切です。
この段階では、まずきちんと立つ、そして重心を前に移動していく時には力を抜きます。
この段階で肘や腕をどうすれば良いのかなどと細かいことを考える必要はありません。

重心を前方へ移動していくと軸脚と踏み出し脚は開いていきます。
その時にからだの前ではグローブを持つ手とボールを持つ手も自然に左右に開いていきます。
手脚はバラバラに動かすよりも同じ動きをするのが簡単だからです。
そういったことからも特にどこかを意識することなく力を抜いておけば良いのです。

そうすれば自然に肘は肩の高さに来ます。
ただし、肩の可動域が狭い、柔軟性が低い場合はノーマルな柔軟性、可動域を獲得しておく必要があります。

肘が高く上がらないのは上がらないように動かしていることがほとんどです。
そういった場合はストレッチングで筋肉を伸ばしても肘を上げる動作の柔軟性を高める効果は期待できません。

動きの柔軟性を高めるにはその動作をすることです。
投げる動作での肩の可動域が狭い、肩が硬いという場合のほとんどがからだの使い方の間違いです。
からだの使い方が原因の場合、柔軟性を高めるにはからだの使い方を直すことです。

肘を高く上げようとしなくても楽に肘が上がる角度があります。
本来、立った時に肩は真横ではなく30°前方を向いています。
その延長線上に肘を持ってくると肩の前・横・後ろが全てリラックスした状態で肘を上げることができます。
肘が上がればボールを持っている手も自然と上がります。

肘が上がらない選手に対していろいろ細かな部分の動かし方を指摘する指導が多いですが、意識は筋肉を緊張させます。
緊張は動作にブレーキをかけてしまいます。
速いボールを投げるには腕は加速されなければなりませんが、動作にブレーキがかかるような動かし方では加速どころか減速してしまいます。
わずかな時間であれこれやれという方が無理な話です。

そういったことからも自然な動作で力を抜かす、抜くことが大事になってきます。

スローイングのメカニズム①(軸脚に体重を乗せて立つ)

スローイングでは、まず脚を上げて軸脚で立ちます。
その時に一度軸脚に完全に体重が乗って静止した状態を作る必要があります。
これが位置エネルギーとなり、投げるための運動エネルギーの基礎となります。
ここで十分位置エネルギーを蓄えるためにも重心を安定させ、一度動きを止める必要があります。

この時に見られる問題は重心が上下、前後に揺れてしまうことです。
投げる動作では重心を前方へ移動することによってボールに伝達するエネルギーを増幅しています。
ですから、重心をコントロールする必要があります。
重心がブレることでボールコントロールもうまくいかず、ボールが浮いたり下に沈んでしまいます。

基本的にはプレートの真上、軸脚の足の裏全体にフラットに体重が乗った状態に必ず持ってくることです。
真っ直ぐ立った状態、軸脚の上に重心がある状態からスタートすることです。
真っ直ぐ立つまで余計な動作をしても、スローイングに対して力を寄与するものとはなりません。
むしろ余計な動きをすると真っ直ぐ立った状態に持ってくる時の安定性の上で問題が生じます。

軸脚で立った時に起こりやすい問題は、軸脚の着き方にもあります。
コントロールの悪いピッチャーは片脚で立った時に重心が軸脚の小指側にかかり、親指が離れてしまいます。
そして次に親指を元に戻し波打った状態で前方へ移動していきます。
こういう状態では重心がブレて位置エネルギーを蓄えることができなくなるだけでなく、プレートを押し出す力が弱くなってしまいます。

一度重心が投球方向と逆方向に逃げてから前に持ってくると重心は後方から上方に上がっていきます。
そこから振り降ろそうとしても上がった状態から下げてくるのでボールは高めに抜けやすくなります。

また、軸脚一本で立った時に膝を完全に伸ばしてしまうことも問題です。
軸脚で立った時に膝が完全に伸びていると、軸脚の蹴りを十分に使うことができません。
前方へ重心を移動する時に膝が曲がっていないと軸脚で後方へ蹴り出すことができません。

バランス良く立つという状態は、膝を少し曲げた状態です。
足首・膝・股関節が僅かに曲がった状態はリラックスしたポジションでもあります。
膝を完全に伸ばした棒立ち状態ではうまく投げられません。

前方への重心移動の際には沈み込めというアドバイスをよく耳にしますが、不自然に沈み込んで重心を下げ過ぎると重力をうまく使えないので前方への加速度が制限されてしまいます。
結果的にボールスピードの減速に繋がることがあります。
重心を低くするとボールが速くなったり、コントロールが良くなるということはありません。
むしろ重心を下げ過ぎると、ボールの軌道が地面と水平に近くなり、打者にとってボールが見やすくなります。

さらに、フォロースルーで腕を巻き込むことができなくなるので、減速ができず腕を前方へ放り出すことになります。
減速がうまくできないと肩の後方の腱板が伸ばされて肩の故障につながる危険性があります。

スローイングとピッチングの違い

スローイングとピッチングは違います。
スローイングとは投げ方、投げるためのからだの使い方、テクニックですから、人間の構造上変えることができないものです。

一方、ピッチングは変化球の投げ方や打者への攻め方、牽制などの実践的なテクニックのことを指します。

投球、スローイングの基本的なからだの使い方

投球、スローイングにおいても、どのポイントで力・エネルギーを伝達すれば一番大きな力・エネルギーがボールに伝わるのかを理解し、そのポイントを間違わないことです。

高めにボールが抜けるのは高めに抜けるようにボールを投げている、シュート回転するのはシュート回転するようなからだの使い方をしていると理解しなければいけません。

ピッチングフォームをみれば、捕手を見なくてもどういうボールを投げたのかがわかります。
投げ方でボールの方向が決まります。
高めに抜けるのであれば、そのような投げ方になってしまっているので低めに投げようとしても無理があります。
投げ方を修正しないかぎり、低めには投げられません。
無理に低めに投げようとすれば真ん中に力のないボールを投げてしまいます。

オーバーハンドから自然なからだの使い方をすればアウトコース低めに向かってボールが投げられるはずです。
このことを基本において、コースや高さの投げ分けをしなければいけません。

言われた通りにできないのという場合は、自然な動きから離れていると理解すべきです。
コントロールは手で行うものと考えがちですが、指先でコントロールすることが一番難しく、意識的に使っていると疲労も速くなります(握力がなくなる)。

さらに狙ったところへ投げられる確率も低いと言えます。
コントロール体幹で行います。
からだでコントロールすると非常に楽です。

これがからだを使って投げるということで、投球数が増えても肩や肘が疲れにくくなります。
肩や肘というよりも体幹のスタミナがなくなった時に手投げになって肩や肘に負担がかかってくるというわけです。
こうなると肩や肘の一ヶ所にストレスが加わるので、障害を招く危険性が高くなります。